同じ家族でも、息子にとってのティンちゃんと私にとってのティンちゃん、
夫や娘にとってのティンちゃん、それぞれのティンちゃんは違うのです。
小さくて愛おしくて大切な家族を失う悲しみは同じでも
悲しみの色や深みもまたそれぞれに違う。
息子は元来真面目で繊細な性質なので、初めは「最後まで楽しもうや」なんて
余裕のある発言をしていたけど
ティンちゃんが息子の世界から消えてしまう悲しみがいよいよ現実になってくると
ダメージを受けたり、また立ち直ったりの繰り返し。今はこわいほど落ち着いている。
みんながそれぞれにティンちゃんを撫でながら言葉をかける。
ティンちゃん、ありがとうね、お空に行ったら思いきり走るんだよ
これでもう病院で注射をしなくてよくなったね、毎日がんばったね、etc.・・・・・
私はそこに付け加えて、病後のA(息子)をいっぱい癒してくれてありがとうね
という言葉をティンちゃんにいつも伝えていた。
サクラには母のことで感謝でいっぱい、ティンちゃんには息子のことで感謝でいっぱい。
病後、ぱっとしなかった息子のこの5年間、ティンちゃんに依存していることに本人は気づいている。
本当は男のくせにうさぎを飼って、ティンちゃん、ティンちゃんと依存している自分なんて
自分の理想とする姿ではないらしい。
自分の自立の足かせになっていることも本人は気づいていたけど、この5年間の息子にはそんなティンちゃんの存在が必要だった。
昨晩病院から帰ってからは、とても安らかに呼吸をして寝ている。
その表情と姿からは痛みも苦しみも感じられなくて、私達もずいぶん救われる思いがする。
息子の指にポカリスエットをつけてティンちゃんの唇につけてあげると
小さな舌でぺろぺろと舐めた。
ティンちゃんの思い出話をする時間は十分に与えてもらった。
うさぎを飼うことになった経緯。
ティンちゃんとの出会い。
こんな子もいますよと元気の良いグレーのネザーちゃんも見せられたけど、やっぱりこの子にしますとティンちゃんから心移りはしなかったこと。
初めてうちに連れて帰ってきた日のこと。
爪切りに通った時のこと。
廊下で喜んで走って散歩しているときのこと。
可愛い仕草。可愛い表情。
無表情に見えても、見慣れてくるとうさぎにも気持ちが表情や態度に表れることがわかってきた。
うさぎにもちゃんと言葉があるんだなって。
そっとしておいて欲しいときはハウスのコーナーに行って背中を向ける。
そんなときは、おばちゃん、あっちに行くねと言ってそっと立ち去る。
食べる時のポリポリカリカリの幸せの音。
おやつタイムは息子の足の周りをぐるぐる回って喜ぶ姿。
ブロッコリーの房をかじっているところ。
水を飲んで顎の下をボトボトに濡らしている顔。
下痢をしてお尻洗いをしている時のキョトンとした顔。
クシュクシュと両手で顔を洗う可愛い姿。
書き出したら止まらない。
ティンちゃん、本当にありがとう。
4年と9か月の間、私達の家族でいてくれてありがとう。
ドアを開けると、いつもそこにいるティンちゃんを見て、どれだけの癒しをもらっていたか。
おばちゃん達は、可愛い動物を見かけたらきっとティンちゃんを思い出すだろうな。
スーパーに行ってバナナとブロッコリーを見てもティンちゃんを思い出すだろうな。
そして月を見上げたら、「ティンちゃん」と心の中でつぶやくだろうな。
生まれ変わったら、また姿を変えてA(息子)のところに帰ってきてやってね。
またいつかどこかで逢おうね。
そんなことを、まだ静かな呼吸のティンちゃんにいっぱい話しかけている。
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